ここでも攻守の逆転

むかし(啓蒙時代)はよかった…。ヴォルテールさん、最近の高等遊民はなっとらんですよ…。

ニセ科学でヒトは死ぬ
http://d.hatena.ne.jp/tikani_nemuru_M/20090221/1235152054
しかし本人の身に起こるまでは、多くの人はそのような被害を問題にしない。
また、たとえ被害がどうであっても「ニセ科学批判」を嫌うヒトにとって、あまり問題ではない。彼等の反感はそことは別にあるのだ。


ニセ科学批判が成し遂げるもの
http://d.hatena.ne.jp/NOV1975/20090221/p1
あと、反論コストが低いということで、ニセ科学を使用した「商売」はやりにくくなっているはず。
ふっ…。ネットの片隅でごにょごにょやって「成し遂げる」つもりになってる奴の発言なんて誰も読んでねーよ。やりにくくなんかなってねー(笑)

最近話題になった
フォーリーフジャパン
http://www.four-leaf.co.jp/
http://www.meti.go.jp/press/20090219003/20090219003.html
http://www.meti.go.jp/press/20090219003/20090219003.pdf
例えば目の悪い女性を眼科でひっかけて、契約書が読めないのをいいことにひどい条件で、効能の認められない健康食品を売りつける。はたまた「ガン」とか人によっては治療が難しい病気を対象に、弱気な部分、いわば心理の隙を突いてくる。ま、この場合マルチとの合わせ技だから、被害者が信じてなくても抜けられない可能性はある。だが、いずれにしたって、ブログのニセ科学批判なんて鼻クソほどの役にも立たんね。

1人から1月1万ン千円をしぼりとり(社保庁も顔負けだ)、フォーリーフジャパンの08年3月期売上高じつに約200億円。1事業でそれだけ出せるなら、NTTデータや日立なんかは、社員の何人かをバアル神の生贄にささげても構わないぐらいだろうな。これだって一罰百戒の効果(なんてないけど)を狙って経産省が挙げた氷山の一角に過ぎない。

で、ネット。ネットね。なにか変化があったとして、ニセ科学批判があふれたかもしれないが、ニセ科学もあふれた。「成し遂げる君」たちには雑音にしか聞こえないかもしれないが、その彼等たちより、ニセ科学の発信者たちはるかに多くの読者を抱えてると思うね。フォーリーフジャパンの活動中の会員は、経産省いわく08年6月時点で11万人。同社自身の説明では09年1月時点で50万人超。サイトはログイン認証付きの会員ページを備え、立派にコミュニケーションツールの役割を果たしてる。こうした連中と直接対決せずに、「ニセ科学批判批判」なんて、つまらん虫をつついてる限りは、社会のお役にはまるで立たんな。まぁそういうダメさ、クダラなさ加減では俺も同じさ。よう自己満足だけの言説でネットを汚すのって最高だよな。あ、はいはい。いざとなったら政府やマスコミがなんとかしてくれればいいもんな。

さて、こういうのを見ると、我が国もニセ科学の被害はけっこうな規模な訳だが。ここで間違ってはいけないのは、日本においてはまだ、ニセ科学はしょせん傍流であり、ニセ科学を認めない立場が本流だということだ。
ゆえに、ニセ科学批判は、つねに優位の維持、防衛の役割を果たすことになる。
ニセ科学の跋扈に対して、それを押さえ込み、被害を抑える立場に回らざるをえない。なにかを「成し遂げる」なんてお笑いで、実際には「成し遂げさせない」努力でしかない。ニセ科学批判は、ブログでごにょごにょ言う連中(俺もそう)だけでなく、実際にキャンペーンを張る科学者やジャーナリスト、政府職員にとっても、終わりのない防衛戦でしかない。

簡単にまとめれば「保守」ということだ。これが、ニセ科学批判批判の虫たちをイライラさせる。勝利のない戦い。現状を維持すすための熱弁。彼等にはその重要さが理解できないが、しかし(だからこそ?)、イライラすることはする。

ひとつには、すでに確立した本流を守る側が、必然的におびる偉そうな態度。権威ぶったものごし、できの悪い生徒に言い聞かせる教師のような鼻持ちにならなさ。中高生時代に、こんなことを滔々としゃべるやつがいたら、友達だったら飛び蹴りをかましたくなるし、教師だったらとにかくヒドいあだ名をつけてボロボロにけなしてやりたくなっただろう。

そして「実際の行動が伴わない駄弁」であるという事実。ニセ科学批判をやる連中が、自分たちが何か意味のあることをしている、とにかくも正当なのだと主張するために、被害や悪影響を持ち出すほど、「で、あんたはそれを止めるために本当になにかしたの?」という反論が出てくる。ご尤も。なにもしてないもんなー。問題意識はあっても活動家にはならない。それが在宅社会評論家ってもんさ(俺もそう)。

ただし、彼等が奇跡的に腰を挙げて、「成し遂げる」努力をしようとして、いったいなにを成し遂げればいいのか。ニセ科学を根絶するための制度を作るか?ニセ科学書を発禁にし、ニセ科学者を投獄し、公の場でニセ科学について話すことを止めさせるか(まるで欧州におけるナチステーマの取り扱いだな)。とんでもない。そんなことニセ科学批判者は考えてもみない。
しかもやったとして、やはりそれも「保守」「防衛」でしかないのだ。すでに勝利している側が、さらに勝利し続けることはできない。

…それでも防衛は続けねばならない。小さくとも目標を作り、実績として、これをやりとげました。これを防ぎました。詐欺の被害から人を救いました。そういう事例を積み上げて、発言に説得力を持たせていくしかない。(おお、ニセ科学を使う連中とまるっきり同じやり方だな。ま、万事がそういうものだ)。

もちろん「正直、被害者のことなんてどうでもいいんだけど、問題意識を持ってることだけは示しておきたいかにゃー。自分が正しいことは証明しときたいかにゃー」っていうなら話は別だにゃ。それなら今のままでいいよね。楽だし。あー楽だ。

…仕事なくしそうなのになにやってんだかな。俺も。

【追記】2009/02/21
そう本当に、ニセ科学批判をすることで誰かを「被害から救う」としたら、「獲物をさらわれた」相手から憎しみを受け、訴訟や脅迫、嫌がらせのリスクに向き合うことになる。そのときこそ、はっきりと自分の行為がなにかをなしたと確認できるだろう。実際、そういうネット上の言論活動で、苦しい戦いに入った人も沢山いる。そうなると、当事者以外の多くの人は、楽しいお遊びでなくなった舞台から降りてしまうがね…。(…いや、ニセ科学批判で訴訟になった事例じゃないな。訂正。勇み足だった。)

ブログにどっさりニセ科学批判を書いておけば、ググった誰かが思いとどまってくれるとか、騙されないようになるとか、無責任な期待を抱いているだけでは、とてもとても…。