八つ当たり

ああ…分かっている…この世のインチキのありったけと、それで苦しむ我々と。
本当に俺がののしりたいのは、無害で非力な「経済通」なんかじゃない。
あの、権力の椅子に腰かけて、国民の税金を好き放題に使い、巨富を蓄え、ツケを貧者に押し付け、トンズラをこく気満々の、最低最悪のクソ野郎どもなんだ。

でも、ちっぽけでセコい俺じゃあ、
そんなところには届かないから。与し易い相手にむかって、ムカツキをぶつける。
こんなことでなんにもならない。ごまめのはぎしりよりイヤったらしい八つ当たりだ。

いくら不条理への怒りを喚き散らしたって、本当に行動しなければダメ。

そもそも「経済通」たちは、いま生活に困ってないから、気軽に空想を膨らませて遊んでいるだけなんだ。
私だって夜学のころは、ハンニバルが本当はこんな男だったとか、カトはこんな奴だったとか、楽しくおしゃべりしてたじゃないか。連中にとってその遊びの題材がたまたま、現在の世界(のごく一部)を扱っているに過ぎない。かわいいもんさ。

それに消費を増やせなんて、そんなもの誰が応じる。実際の生活とかけ離れた絵空事には、逆にいえば害もないんだ。

米国様のごきげんをとるため米国債を売るな?これだけ買い込んだ今じゃ、反米だろうと媚米だろうともうどうしようもない。モルガンの優先株をつかまされたMUFGと同じように。奇跡や僥倖を待って、実際にはただ踏み倒されるまでじっとしているしかない。

そうとも。なんにもならん。「経済通」がお偉いさんから仕入れた考えを吹聴してまわって、それに人々が釣られることがあったとしても、そのお偉いさんをどうにかできなければ、数万人からいる「経済通」のタイコ持ちを止めようがない。ののしったって、非難したって、効果はないんだ。じっくり、真剣に説得しない限りは…それだって俺みたいな奴には無理さ。

生活苦と絶望が下層をおおい、不公平感が渦巻く。
だがそれでどうなる。
弱いものがさらに弱いものを作って叩き、
暖衣飽食のとっちゃんぼうや、おぼっちゃま方は、パソコンを前に議論を戦わせ(ありがたいことに、俺もまだ今だけはその身分だ。いやありがたくもないな)、
富豪と権力者は財を積み、力を増していく。
英雄を求めれば独裁者がはじける。しかしもう、それすら許さないほど社会は閉塞しているか…。ケッ…。

それでもこの世には、本当に光り輝く善意や希望や愛情もあるのだ。それはどんなにチンケな人間の心にだってあるのだ。それはそうだ…。