なぜ消費は拡大しないのか

庶民は、いや、こむずかしくいうと購買力を持った日本国民は、だいたいにおいて消費を拡大する意欲は少ない。内閣府の統計による家計消費支出は、2008年2―8月に連続で「実質」前年を下回った。
理由は物価が上がってて、給料が増えないから。そして先行きが暗いから。

経済学の徒以外は誰でも知ってる話だ。

物価が上がっている理由は、(1)世界的に消費者が増えたから、(2)投機資金が流れ込んでいるから。である。

さて、それを踏まえて以下の記事をごらんいただきたい。

反リフレの経済学
http://d.hatena.ne.jp/mojimoji/20081005/p2

ここに幾つか問題がある。まず上記の記事では、経済を一国の中で完結したものとして扱っている。日本のように外国に加工品を売り、食い物や資源を掻き集めている国では、こうした仮定はうまくいかない。

例えば…


代替貨幣への支出が増える、言い換えれば、原油や土地等への投機が増えることになります。代替貨幣は先にも述べたように、労働を使って供給を増やすことが困難な財貨でもあります。よって、代替貨幣への需要は雇用を増やしません。代替貨幣の高騰が、それを原材料とするさまざまな財やサービスの価格をも押し上げかねません。コスト・プッシュ・インフレです。こうして雇用は増えないまま、インフレだけが生じ、一層生活を苦しいものにしてしまう可能性があります。

ここでいう「代替貨幣」というのは原油だとしよう(土地は下がってるしね)。原油にカネをつぎ込んでるのは日本だけじゃない。というか、みんな大好き米国の投資家様が相当数いる。
日本が代替貨幣に投資した分だけ物価が上がるのなら、日本の投資家が儲けて、その分を国内の消費に回すかもしれない。しかし儲けを外国の投資家がとってくとなると、日本人は投資を「しなくても」物価はどんどん上がって行く訳だ。

実際のところ、現実はそうなって…いた。

そもそも庶民…いや、購買力のある日本国民の多くは、いくら預金金利が安くなっても、金融商品とか代替通貨は買わない。どれだけマスコミが騒いでも、経済学の徒が「その方が合理的」だと思っても。よしんばインフレが起きてカネが紙くず同然になっても。なぜかというと、金融商品を信用してないから。なんかキモいから。そんな非合理なと経済学の徒が思っても、キモいという理由で買わない。お気の毒様。じゃぁどうして貨幣はキモくないの?とか訊き返したところでムダ。単に子供のころから見慣れてるからだよーん。試しに貧乏そうな友達を捕まえて、おすすめの代替貨幣を買わせるよう説得してみ。

ああ、もちろん消費にもカネを使わない。

政府「これからカネなんて紙クズ同然になっちゃうんだから、今のうちに使っちゃえよ。レッツ、コンスーム!」
庶民「分かった…とりあえずそのときに備えて貯金しとく」
政府「いや話聞いてなかったの?紙クズになっちゃうんだよそれ」
庶民「てめぇぶっ殺すぞ」
政府「?!…いまなんて…」
庶民「紙クズにしたらぶっ殺す」
政府「いやだから財貨をね。いまのうちに買って、だね」
庶民「将来が不安だから貯金しとく」
政府「だから紙クズに」
庶民「ぶっ殺す」
政府「…」

おっとこれは外国の場合で、日本は「…貯金しときます」「…とりあえず貯金しときます」「…よく分からないけど貯金しときます」でした。テヘ、間違い。

最後に、どうしたら消費を増やすことに魅力を感じるか。

無理。

だいたい庶民は、すでに消費を「名目」増やしてる。要するに企業が儲かるほどに消費を増やすにはどうしたらいいかという話になるが、将来はもっと物価が上がりそうなのに、どんな甘いこと言われたって、どばーっとクルマだの住宅だのにカネ使う気になるもんかーい。

だいたい国内消費を増やして、長期的にみて日本経済は上向く保証があるのか?原料も半製品(住宅の建材とかもだぜ)も、製品そのものさえ外国(ってか中国な)から仕入れるようになりつつある。カネは外へ流れ出していく。一方、日本からの輸出は「海外の」消費が増えなきゃ上向かないんだぜ?貿易で赤字を出しながら(もう単月で出したけど☆)消費を続けたら…そういうお偉い国がいまどうなってるのか、経済学の徒以外なら分かるはずだろ。

希望のない話かもしらんが、庶民をだまくらかしてカネを吐き出させて、それで日本の景気が上向くなんて幻だし、実現したら有害だと思うので、そこんとこ。