そうだな。私にITゼネコンを非難する資格はない。

少なくとも5年は、そのおこぼれに預かって生きてきた。
役に立たないシステムだと承知で、その下働きをして日銭を稼いできた。
そういう寄生虫の一人だ。ノミにたかるダニといったところ。

仕事といえばコード書きと、「すでにできあがったシステム」の後付け仕様書でっちあげの手伝い(これがどんなに多かったことか!どんなにバカバカしく、時間がかかり、金にならず…しかし下っ端がありつくにはちょうどよかった)

「プロたるIT業者」の名誉のためにいえば、プロジェクトマネージャーを務めるITゼネコン正社員は相当に優秀か、そこそこに優秀であり、一様に勤勉だった。我々が終電で帰るとき、彼は会社近くのサウナに泊まる。私が仕事をもらっていた事務所のトップが、クライアントのビルに缶詰になる1週間前には、プロジェクトマネージャーは同じ場所で缶詰になっていた。

たいていの場合、複数の案件をかけもちし、ほとんどが専門外で、気が狂うほど忙しく、ノイローゼ気味で、しかしタフで、いつも自分がやりたい仕事以外をしていた。

今風にうならガバナンスの不在、単純にいえば管理者の人手不足で、できるシステムはツギハギだらけで、良心があればとてもこれを顧客に使わせられないと思ったが、納入先へのアフターフォローをきっちりやるという話を聞かされて、むりやり安心することにしていた。本当かどうかは知らない。あれは…少なくとも汎用性はなく…管理者が変わったら、訳の分からない内容だと思う。

実際、わけの分からないシステムの更新をやったこともある。後付け仕様書という、不完全な「地雷の埋伏地図」を作るのはそういうときだ。なんだか地雷の地図を作りながら、新たな地雷を埋めているような感じだった…。

いや私が見たのは例外、あるいは下っ端が気にする細かなアラに過ぎず、「プロたるIT事業者」たちの多くは、もっとまともで、整然としたシステムを組んでいるのかもしれない。

ただ、私が切られる直前まで、状況はどんどん悪くなる一方だった。

ITゼネコンが死ねば、私の旧知の人々にとっては凄まじい不況の波が押し寄せるだろう。いや、もう十分な数の会社が潰れ、多くの知り合いがどんぞこに落ちたが…。

【追記】2008/06/16

だから「プロたるIT業者」が、「俺たち(誰?)」よりWEBについて知っているかといえば、ITゼネコン正社員は、それなりに偏りがあっても、だいたいにおいて、インタプリタ言語から、もっと下の通信の世界の言葉まで、教養として知っている。だが個別分野の専門家は、研究所は知らないが、実務分野では少ない。もしくは専門家であっても畑違いの仕事をさせられる場合が多い。技術者が管理者にされているからだ。
そして社外の最新事情に必ずしも明るくない、必要ないから。それと自社製品を売り込む必要から、汎用的な技術を重んじない傾向がある。そして人手不足だ。というか、優秀で高給取りの正社員を沢山使うと、採算が悪化すると思っているから…実際には…どうか知らないが。

これが下っ端から見た「プロたるIT業者」の姿だ。「WEBを構築した」という言葉…それはWEBの「何を」構築したかによって意味が変わってくるが。通信そのものか、それともコンテンツの世界の話か。
正直いって、コンテンツ分野に関しては、プロたるIT業者は、あまり得意ではない。いや、努力はしているようだし、私は最近の情勢にはうといから、H社とかT社とかN社とかが、ひょっとして組織を改革して、主導権を取り戻しつつあるのかもしれない。

あるいはプロたるIT業者という言葉のとらえかたが違っていて、いわゆる炊飯器からシステム構築まで、何でも請け負う巨大企業を指すのか、私にはおよそ縁のない新興企業を指すのか、それも分かりかねる。

だが業界は激変しているし、私の知るプロたるIT業者の姿はもうないかもしれない。そうだなぁ…。