空の彼方

世の中というのは、なるようにしかならないものだ。

杞の国の人は、空がゆっくりと落ちかかってくるのを観測して、数千年のうちに地上の万物は潰されてしまうのを知り、周囲に触れてまわった。しかし親族や友は、女神がこの世のはじめに据えた五つの石が空を支えているのだから大丈夫と答え、あとは笑って相手にしなかった。

杞の国の人は自ら空を支える柱を建てようと思ったが、人一人の力ではとても足りないのが分かって、絶望して家に閉じこもると、三日三晩のあいだ嘆き続け、四日目の朝眠りに就いた。

丸一日して目を醒ますと、以前よりは大人しくなっていた。相変わらず空が落ちてくる話はしたが、しつこくは食い下がらなくなった。顔からは死ぬまで憂いが消えなかったとはいえ、酒も呑めば、詩も吟じ、友と笑い合うようになった。そうして暮らしを続け、ずいぶん長生きもして、最後はたくさんの親族に囲まれて臨終を迎えると、つつがなく先祖の墓へ入った。

それから月日は流れ、今や空の高さはかつての十二分の一にまで落ちた。