ああ

綺麗な白燐弾と汚い白燐弾 : 週刊オブイェクト
http://b.hatena.ne.jp/entry/http://obiekt.seesaa.net/article/114180739.html

半径40−60センチにわたって地面が焦げ、燃えた黄リンが残留していた
ちなみに、自衛隊員に直撃していたら、「ちょっと火傷をしたかもしれない」な。いやきちんとした服装やマスクをしていれば大丈夫か。一般市民じゃないものね。ま、しかしファルージャでの使われ方を考えてみれば、殺傷能力が低いとかさらりと書いてた記者はウカツだったと。

そして、自衛隊は意外と…というか、かなり武装勢力に好かれてなかったのが今更ながらよく分かる。サマワでの緊張関係は、私はもっと甘く考えてた。多分、在宅でないほうの軍事専門家、つまり自衛隊員は、黄燐弾が撃ち込まれたことの意味、「我々はそれを持っています」あるいは「もう持っているのはご存知でしょうが、このくらいの量を持っていて、こんな風に使えます」というメッセージを間違えずに受け取ったと、私は思う。自衛隊員が記者にどう説明したかは想像できないけど。

しかし、これでもかというほどエゲツない使われ方がされるまで、日本のジャーナリズムの白燐弾に対する認識が恐ろしくヤワいもんだったということを、暴いた良記事ですね。我々が「殺傷能力が低い兵器」と解説されて、ぼんやりと受け入れているものが、実はそうでもない、っていうのが分かると、割と緊迫してないと思ってた現地でのエピソードの意味もがらりと変わってくる。そういう情報がこれから、熱心な方の努力によって次々と明らかになるといいですね。id:Apemanとか、id:D_Amonとか、そういう方がどう思うかは知りませんけど。

こうして安全な室内で、人死にをおもちゃに遊ぶトッチャンボウヤたち。私も含めて。

【追記】2009/02/14
在宅軍事専門家たちを理解するために、忘れてはならないのは、彼等はある種の兵器を愛しているということ。(たとえカタログでしか見られない血統書付きの品種だった場合でも)ペットのような親近感を持ち、守ってやらなければならないと感じていること。彼等が本質的に憎むのは、右か左か、どちらの陣営かではなく、兵器そのものを否定し、軍備や戦争そのものの不必要性を唱え、その理想の実現のために手段を尽くすような輩。あるいは少なくとも軍備の社会における重要性の順位を押し下げようと努力する連中。軍備の重要性が高まればその専門家の地位も増すが、もし低下すれば、つまらない、うすきみわるい趣味を突きまわすオタクでしかなくなってしまう。その点で在宅でない方の専門家、例えば田母神元空幕長と同じ原理で動いている。私はそれを決して愚かだとは思わない。ある種の地位、権威、はたからすればくだらないものに見えても、状況が変われば大きな意味を持つ何かを手に入れ、高めていこうとするのは、自然だ。うわべの卑小さなど、問題ではない。

だからこそ、武装勢力がどこの武器庫から持ち出そうが、狙われた相手が自衛隊だろうが、とにかく焼夷兵器などまっぴらごめんだ、という考え方(実はそれほど特殊でもない)は我慢がならない。あえて「自衛隊が狙われるなら問題ないんだろお前等は」という仮定を置くことで「お前等だって軍備そのものは否定できないはずだ。お前等にとっては軍備の否定より、特定勢力の擁護/非難の方が大切なはずだ」という挑戦をかけるのだ。そして実際のところ、同情や肩入れというやつは、しばしば軍備そのものの否定より、特定勢力の擁護/非難の方が大切だと、判断させてしまうものだ。

【追記】2009/02/14

「綺麗な白燐弾」とか、下手をすれば自分に跳ね返ってきそうな言い回しにも注目したい。

在宅軍事専門家は「非人道兵器」とか「残虐兵器」といった表現の詐術をよく承知している。
つまり軍備を規制しようとする輩が、いったんは「綺麗な兵器」と「汚い兵器」に線引きをしておきながら、隙あらば「汚い兵器」の定義を拡大し、最終的には核ミサイルから小火器にいたるまで、在宅軍事専門家が愛してやまぬ「すべての兵器」に規制をかけようとしていることなど、お見通しなのだ。
綺麗なとか、汚い、というのは方便に過ぎないこと。汚い兵器としてくくったものを戦場から退場させ、そこに規制の橋頭堡を築くための口実に過ぎないことをよく分かっている。だから実際のところ軍備を規制しようとする側は「綺麗な兵器」をはっきりさせたがらない。いつでも汚い兵器の側に繰り込めるようにグレーゾーンにしておきたがる。それが在宅軍事専門家をイライラさせる。だからこそ「ほら、お前等が肩入れする武装勢力が使ってる。だから綺麗な兵器でいいだろ?な?」という風に持って行く。

もちろん、軍備を規制しようとする側は「やはりああした危険な兵器を、正規軍でない武装勢力までがたやすく手に入れ、使用するのが問題だ。治安維持活動に支障が出る。使用だけでなく、製造や所持も厳しく取り締まらねば。製造が容易だというなら、なおさら厳しい監視体制が要るのだ」などと言い出すかもしれない。「そんな綿密な監視体制なんて非現実的だ。武装勢力に兵器を供給する工場を一つ一つ見張れとでもいうのか」と反論すると、今度は「いやいや可能だとも。まずは白燐弾は危険で製造、流通、使用してはならないというコンセンサスを先進国のあいだで共有しなくてはならない。そして正規軍や大手メーカーの横流しや秘密の供給といったものから断たなくては」と、まぁ屁理屈はいくらでも応酬できるものだ。